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作品鑑賞
この印象的な白黒の銅版画は、観る者を中世の戦闘か奇襲の混沌とした暗い場面に引き込む。構図は密集し動的で、鎧をまとった多くの戦士たちが、そびえる崖と石造りの廃墟に囲まれた狭い岩道で激しく戦っている。画家の光と影の巧みな対比は、戦闘者を包む深い影と、濃い雲間から漏れる幽かな月明かりとの鮮烈なコントラストに表れている。
渦巻く雲とねじれた枯木が緊迫感と迫りくる破滅の気配を醸し出す。倒れた戦士たちや巨大な倒木を乗り越える身体のねじれが、絶望と混乱の感覚を強く伝える。細密な線描は、鎧の輝きから石壁の粗い質感まであますところなく捉え、場面に生々しいリアリズムを与えている。この銅版画は19世紀ロマン主義の挿絵の典型であり、中世の伝説的物語の英雄的かつ悲劇的な側面を喚起し、この激しい戦いの背後にある物語を想像させる。