ギャラリーに戻る

作品鑑賞
この魅力的な風景画は、静かな川辺の場面にあなたを誘います。中心には、大きな表情豊かな樹木があり、そのねじれた幹や豊かな枝葉は風に揺れ、葉の間からは軽やかな囁きが聞こえてくるようです。葉の細部の描写からは光と影の競演が感じられ、視線は柔らかな雲の漂う空へと導かれます。遠景には急峻な山があり、山腹には村か集落が点在しています。水面には二人の人物が生命感を与え、一人は岸に立ち、手を広げて合図か挨拶をしているようで、もう一人は小舟を漕いで静かな川を滑っています。
セピア色調で描かれた作品は時代を超えた郷愁を感じさせ、自然と人間の調和を伝えています。限られた色数によって質感と細部に焦点が当たり、穏やかながらも動きのあるエネルギーが感じられます。18世紀後半に制作され、イタリアの美しい風景に着想を得たイタリアン風景画の伝統を示し、理想化された自然と微妙な人間の物語を一体化させた作品です。