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作品鑑賞
この作品は、港で木材を積み下ろす活気ある産業の一場面を捉えています。中央には岸辺に停泊した大きな船があり、木材が積まれ、その周囲には小さな船や労働者が見えます。画家は印象派特有のやわらかく途切れがちな筆致を用い、落ち着いた土色と煙のようなグレーや青を混ぜ合わせ、曇り空の港の雰囲気を巧みに表現しています。遠くの煙突から立ち上る煙が空と溶け合い、動きのある中にも静けさを感じさせます。
色彩は控えめながら効果的で、船の暗い船体と明るい背景の対比が視線を誘導します。筆遣いの質感からは、木材の軋む音や労働者の話し声、水のさざ波の音が聞こえてきそうです。19世紀末の産業拡大と商業を反映しつつ、印象派の手法によって工業の硬さが和らげられ、日常の労働と自然と進歩の共存が詩的に描かれています。