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作品鑑賞
柔らかく穏やかな光に包まれ、深い闇の背景を背に優雅な姿勢でたたずむ気品ある女性の肖像画です。彼女の銀色がかった白髪は洗練されてまとめられ、落ち着いた表情には知恵と穏やかな強さが感じられます。画家は真珠のイヤリングやネックレスの質感を繊細に描写し、ほのかな輝きを放っています。彼女の薄い透けるようなドレスとショールは肩に柔らかく掛かり、過ぎ去った時代の優雅さと洗練された趣をささやきかけています。
構図は親密でありながらも格式張っており、人物は横顔で描かれ、鑑賞者は正面からではなく彼女の内面を思い巡らせるように誘われます。柔らかなクリーム色や淡い青色、深い影の織りなす控えめな色調が全体の静けさと穏やかさを高めています。筆致は細やかなトーンの変化を巧みに織り交ぜ、質感は生き生きとしつつも幻想的。1930年の制作であり、当時の洗練された感性と肖像の女性の貴族的な品格を見事に表現しています。静かな気品と永遠の優雅さの祝福のような一作です。