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作品鑑賞
この作品は広大な田園風景の中に静かに佇む古い修道院の遺跡を描いています。細やかでやや薄く色づけられた修道院の姿は、かつての壮麗さと時の流れによる風化を感じさせます。前景には水辺の近くでのんびりと草を食む牛たちが描かれ、生命の温もりが伝わってきます。画面は高くそびえる木々の枝葉に囲まれ、視線を修道院や遠くの霧がかった山々へと導きます。
柔らかなアースカラー、穏やかなグリーン、微妙なグレーを基調とした色彩が用いられ、当時の典型的な細かい筆致と絵具の薄い重ね塗りが、静謐で瞑想的な気持ちを喚起します。空に溶け込む遠景の大気遠近法は奥行き感と静寂さを強調し、歴史的な物語と自然の美しさが調和しています。修道院は精神的かつ建築的遺産のシンボルとして、田園生活のゆったりとした流れの中にひっそりと佇んでいます。