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作品鑑賞
荒々しくねじれた大樹の下で展開される緊迫の場面が描かれている。中央には筋骨隆々の男と翼を持つ天使が絡み合い、力強くも繊細な格闘の瞬間が捉えられている。男は布を身にまとい、苦悶の表情を浮かべ、対する天使は薄紅の衣を纏いながらも優しく男を制している。周囲は深い緑や茶色の濃密な葉で覆われ、その暗い色調と光を帯びた人物像とが強烈な対比を成し出している。遠方には朝焼けか夕暮れを思わせる金色の光が差し込み、絵画に神秘的で深い感情的重みを加えている。筆致は力強く、ロマン主義的なエネルギーあふれるもので、動的な形態と陰影が生き生きと表現されている。構図は自然と中心部の格闘に視線を誘導し、背景の群衆が物語性を添えている。