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作品鑑賞
この作品は、堂々たる老木の壮大さと生命力を見事に捉えています。太くねじれた幹が空に向かって勢いよく伸び、その密生した葉冠は豊かに広がっています。繊細な筆致と大地色の穏やかなグラデーション—柔らかな緑や薄茶色、オーカーのニュアンス—が静かな自然の深みを醸し出し、背景の青灰色の空と対照的に木の有機的な生命感を引き立てています。曲がりくねった枝や質感豊かな樹皮は、長い歳月と力強さを感じさせ、自然の不朽の精神を思わせます。
1780年に描かれたこの作品は、自然の細部を丹念に観察する芸術潮流を示す好例です。ドラマティックな物語性を排し、親密な観察画として、木をまるで生きた個性ある存在のように描いています。静謐な畏敬の念を呼び起こし、日常の自然の中にある荘厳さを思い起こさせます。光と影の繊細な交差が画面に立体感と生命感を与え、細部と柔らかさのバランスが鑑賞者の想像力を自由に広げます。