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作品鑑賞
この魅力的な絵画は、海上で帆船が一瞬の舞を繰り広げる様子を描き出しています。力強く速い筆致で風と水の絶え間ない動きを感じさせ、2つの主要な帆が画面を優しく支配しています。クリーム色とベージュの帆が、波立つ海の控えめな青緑色と柔らかく対比を成しています。作家の技法は緩やかで印象派的なもので、厚く目に見える筆致が形を示唆しながら厳密な輪郭にはとらわれず、観る者の想像力を誘います。帆を吹き抜ける風や波の優しい音まで聞こえてくるような質感を感じます。
縦に伸びる帆と水平に流れる海のリズミカルなバランスが、静謐ながらも動きを感じさせる構図をつくりだしています。限られた調和の取れた色調は自然の穏やかさを強調し、厚塗りの筆致は、まるで今まさにその瞬間を捉えたかのような鮮やかさと新鮮さをもたらします。この作品は、19世紀末から20世紀初頭のボート文化の気品や余暇の精神を思わせ、光と動き、自然の美の儚い印象を追求した画家の想いが響きます。