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作品鑑賞
この静謐な木版画は、前景にそびえる竹林を捉えています。細く高い竹の幹がリズミカルなパターンを作り、穏やかな川辺の風景と対照を成しています。冷たく澄んだ青や緑の色調が支配的で、早朝や夕刻の落ち着いた新鮮な空気を感じさせます。竹の間からは、整然とした水田が幾何学的に広がり、淡い黄色や緑のパステルカラーが彩りを添えています。遠景には柔らかな青い山々がぼんやりと輪郭を見せ、白い帆船が静かに川を進む様子は詩的な動きを添えています。
作家の技法は、線の使い方と色のグラデーションに卓越し、竹の幹はそれぞれ異なる色調で深みと光の変化を表現しています。縦に伸びる竹と、横に広がる河岸と田園の構図が見事に調和し、鑑賞者の目を画面全体に誘います。鑑賞者に静かな瞑想を促す感情表現であり、伝統的な浮世絵の技法と近代的な自然描写が融合した1950年代の日本風景版画の代表作です。