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作品鑑賞
この作品は、モンテローザ山塊内と思われる氷河台地の息を呑むようなパノラマを捉えています。画家は、広大な雪と氷の広がりを描くために、柔らかくも明確な筆致を巧みに用いています。構図は、氷の地形を横断するように視線を導き、光と影の戯れがクレバスや尾根を際立たせています。色彩は寒色系が支配的で、氷の白と青が、太陽に照らされた遠くの山々の暖色と対照をなしています。
この絵は、畏敬の念と孤独感を呼び起こします。これほど細部まで描かれた風景の圧倒的なスケールは、人を途方もなく小さく感じさせます。雪の下でブーツがサクサクと音を立てる音、身を切るような風、そしてこのような高地を支配する静寂が、まるで聞こえてくるようです。画家は光と影を巧みに使い、劇的な雰囲気を生み出し、鑑賞者をこの雄大で凍てつく世界の中心へと引き込みます。