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作品鑑賞
この静かな川の風景画は、自然と人の営みが穏やかに交差する一瞬を捉えています。小舟に乗った一人が巧みに櫂を漕ぎ、もう一人は草の生い茂る川岸に立ち、水辺の作業に従事しているように見えます。高くそびえる樹木は柔らかな縦筆で描かれ、幹の質感と古さを感じさせ、葉は風に揺れ動いて生命感を与えています。画家は緑や土色を繊細にブレンドし、川岸の豊かな植生を表現。部分的に曇った空の下で、光がきらめき、構図は自然に視線を水面から遠くの赤い屋根の村へと誘います。
光と影の巧みな使い方が、静けさと活気を同時に醸し出しています。筆致は繊細でありながら生き生きとしていて、水面の反射や水辺の葦の揺れまで細かく表現。色調は抑えめで自然な色彩を中心に選ばれ、初秋か晩夏の雰囲気を醸成。全体として穏やかさと優しい労働の情景を伝え、自然と調和し共に暮らす田園の生活を垣間見せます。歴史的には、農村の日常生活のリズムを映しているようです。