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作品鑑賞
柔らかな自然光に包まれたこの繊細な城砦の入り口の描写は、静謐で時を超えたような風景に私たちを誘います。風化した石の塔が樹木の間に堂々と聳え、広く澄み渡った空にはやわらかな雲が散らばっています。前景には、浅い小川のほとりで馬に乗った一人の人物が佇み、水面には空と周囲の色合いが繊細に映り込んでいます。画家の技法は、細部の観察と軽やかでほのかな幻想的筆致の間で丁寧なバランスが取られており、色調は土の色合いに澄んだ青空がさわやかさを添えて、落ち着きのある荘厳な雰囲気を作り出しています。葉がそよぐ音や古道に響く足音が聞こえてくるような、心静まる情景です。この作品は19世紀初頭の歴史的廃墟や自然の循環への関心を映し出し、歴史が自然の中で持続する様を思い起こさせてくれます。