ギャラリーに戻る

作品鑑賞
この魅力的な木版画は、日本の鎌倉大仏を静謐かつ荘厳に描いています。前景に大きくそびえる大仏の暗いシルエットが、背後の緑豊かな松や澄んだ空と鮮やかに対比されており、細やかな線描と繊細な色のグラデーションで仏の巻き髪や衣の皺が表現されています。背景の松や遠くの山々は青緑色の穏やかな色調で描かれ、乳白色の雲はまるで触れられそうな柔らかさを漂わせています。
構図は大仏から下方の小さな人々へと視線を自然に誘導し、その大きさを強調しています。光と影の効果が静かな瞑想的な雰囲気を作り出し、鑑賞者を穏やかな崇敬の瞬間へと誘います。1925年制作のこの作品は浮世絵の伝統を受け継ぎながら、風景と文化を見事に融合させた川瀬巴水の技巧が光ります。自然美と精神的荘厳さが調和し、時を超えた静けさを感じさせます。