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京都 知恩院 関西シリーズ

作品鑑賞

この穏やかな木版画は、重厚な木製の大柱と半開きの扉によって構成された静謐な建築空間へと鑑賞者を誘います。扉の隙間からは、柔らかな夕暮れか朝焼けの光が床に穏やかな影を落とし、穏やかな時間が流れていることを感じさせます。力強い柱の連なりが画面のリズムを生み出し、縁側の奥へと視線を誘い、やがてその先の豊かな樹々へと導きます。石段や床の青みがかった灰色の微細なグラデーションが、遠景の樹々の淡い緑や空の柔らかなピンク色と優しく対比し、自然と建築の調和が見事に表現されています。

細かい質感の表現が卓越しており、柱の木目や年季が感じられ、石段の粗さもリアリティを持って描かれています。繊細な陰影と落ち着いた色調が、静かに思索するような雰囲気を醸し出しています。感情的には、一人ぼっちで静寂に包まれた感覚が漂い、遠くに見える小さな人物がその静けさを一層際立たせています。歴史的には、20世紀初頭の日本木版画の伝統技法と現代的な光と遠近表現の融合を示し、京都の悠久の美しさを称えています。

京都 知恩院 関西シリーズ

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1933

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サイズ:

4401 × 6441 px

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