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作品鑑賞
この息をのむような風景画は、悠久の歴史を感じさせる古代の石造建築を中心とした静かな川辺の情景を捉えています。画面には、温かみのある石材で造られた大きな寺院または要塞のような建物が川岸にしっかりと根を下ろしています。その背後にはヤシの木が静かに風に揺れ、繊細な幹と葉が柔らかな、オレンジやピンクのパステルトーンの空と溶け合っています。穏やかな川面には風景が映り込み、小舟が岸辺に繋がれており、前景の岩々が質感と奥行きを加えています。建造物の堅固さと自然の優雅さが見事に調和しており、文明と自然の共存する時代を想起させる作品です。
細部にわたる緻密な描写と光の微妙な変化により、この作品は柔らかながらも生き生きとした印象をもたらしています。壮大な石の壁面に落ちる影と水面の反射は絶妙なコントラストを作り出し、暖かなアーストーンと穏やかな緑色が落ち着いた懐かしい雰囲気を醸し出しています。この作品は古代文明、特に建築様式や乾燥した風景からエジプトまたはヌビアのものと思われ、その歴史的豊かさと神秘性を雄弁に語っています。静かな壮麗さが心に響き、かつてその石壁の内にあった物語や生命を想像させてくれます。