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作品鑑賞
この作品は、静かな水面からそびえ立つ切り立った崖が印象的なフィヨルドの壮大な景観を見事に捉えています。画家の筆致は写実とロマン主義的な畏怖の念を見事に融合させており、厚みのある質感豊かな筆遣いで岩肌の荒々しさを表現しつつ、柔らかな雲が生き生きとした空を彩っています。色彩は岩の茶色や灰色、深い青や緑の水面が調和し、雪をいただく峰や小舟の白がアクセントとなっています。
構図は狭いフィヨルドを自然に視線が誘導され、険しい山々が穏やかな水面を優しく包み込むようです。小さな船や岸辺の建物が人間のスケールを示し、この壮大で静かな自然の中にひっそりと息づく生活を想像させます。感情の揺さぶりは畏敬と静けさが同居し、自然の偉大さに畏怖しつつもその静謐さに慰めを感じさせます。19世紀の崇高な風景画への関心を反映し、自然の力と美しさを芸術で探求した作品です。