ギャラリーに戻る

作品鑑賞
川辺の静かなひとときを捉えたこの絵画は、柔らかな黄金色の光が黄昏の訪れを告げています。岸近くに小舟を浮かべ、一人の漁師がじっと釣り糸を垂れる様子が描かれています。樹木の葉や枝がわずかにぼやけて表現され、観る者をこの穏やかな情景に引き込みます。筆致はゆるやかで表現豊か、空気感が漂うようなたゆたうタッチが静けさと内省のムードを織り成しています。
構図は左の濃い緑の樹影と、右の広がる静かな川面とを巧みにバランスさせ、空には淡い青と温かみのある雲が散りばめられています。色調は落ち着いた緑や茶色、穏やかな青を基調とし、自然の静けさや釣りの永続的な営みを感じさせます。時が止まったかのような静謐さを伴い、水のさざめきや葉擦れの音が聞こえてきそうな一枚です。