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作品鑑賞
この絵画は、険しい山岳地帯で獅子を静かに狙う男を描いた緊迫した場面を捉えています。伝統的な衣装をまとい、赤い服と頭巾を身に着けた男は、岩場に身をかがめ、獅子にじっと目を向けています。その姿勢からは緊張感と期待が感じられ、銃をしっかり握り狩りの準備を整えています。画面構成は視線を上方へ導き、男の目線先にある獅子の堂々たる姿が暗い岩肌を背景に際立っています。落ち着いた緑や茶色、黄土色を基調とした色彩は大地の豊かさを感じさせ、鮮やかな赤が人間の存在を際立たせています。
筆致はロマン主義の特徴を示し、力強く表現的で、動きと緊張感を伝えます。光と影の対比がドラマ性を増し、遠方の青灰色と近景の暖色が巧みに響き合っています。この作品は単なる狩りの瞬間を描くにとどまらず、人間と野生動物の微妙で危険な関係を描き出し、畏怖と勇気、緊張感を呼び起こします。1849年の制作で、当時の異国情緒と未開の自然への憧憬が反映された意義深い作品です。