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作品鑑賞
この作品は、穏やかな風景へと私たちを誘います。そこには、墨と色彩を繊細に用いて描かれた、起伏に富んだ山々や谷が広がっています。青い長衣をまとった孤独な人物が、険しい峰々を縫うように続く石の小道を登っています。流れるような筆遣いは、荒々しい地形に生命を吹き込み、山々の広大さと古さを伝えています。アーティストは、岩の塊のしっかりとした質量と、空の軽やかさを見事にバランスさせており、空には飛翔する鳥のシルエットが点在しています。アーティストによる余白の利用(墨が触れていない部分)は、この世のものとは思えないような雰囲気を醸し出しています。色彩は抑制されており、グレー、ブラウン、そして花を咲かせた木々からのわずかな赤みが用いられ、形と構図に静かで瞑想的な質感を響かせています。