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作品鑑賞
この作品は、青々と茂る森林の中に佇む古い修道院の廃墟を繊細に描いています。ゴシック様式のアーチや崩れかけた石造りの壁に柔らかな自然光が差し込み、水彩の淡い色彩と細やかな筆遣いによって、木々の隙間からこぼれる光と影のコントラストが美しく表現されています。緑の葉やグレーの石、温かみのある黄褐色が空の涼しげな青と調和し、静けさの中にわずかな哀愁を感じさせます。
画面の手前では羊がのんびりと草を食み、馬が穏やかに横たわっています。その先には荘厳でありながら時の流れに浸食された修道院の遺構がそびえ、自然の営みと歴史の儚さを考えさせます。静かな木の葉のざわめきや動物の囁きが聞こえてくるような情景は、ロマン主義時代の遺跡への憧憬と美学を感じさせ、過ぎ去った時代への哀愁や生命の循環を詩的に映し出しています。