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作品鑑賞
この鮮やかな単色画は、一人の男が意志の強さを帯びて前進する姿を描いています。広いツバの三角帽の影に隠れた頑丈な顔は、険しさと決意を湛えています。墨の洗いやブラウン系のタッチで自由かつ確信的に描かれた人物は、大きな包みを背に、もう一つを腕に抱えています。彼は街頭の物売りか、行商人のように見え、そのぼろぼろの衣服やチェック柄の布などは、苦労と絶え間ない移動の日々を物語ります。背景は簡略化され、人の姿に視線が集中し、姿勢からは動きと重みが伝わってきます。
明暗の対比による立体感の表現が巧みで、衣服の質感が際立っています。持つ杖の斜めの線は静かな構図の中に動きをもたらしています。ロンドンの街角で彼の声が響くのが聞こえそうな迫力があり、努力と苦闘、そして望みと諦めが入り混じった18世紀の都市労働者の生活を感じさせる一作です。