この肖像画は、白いバラの冠を頭に戴き、左手に楽譜をそっと持つ上品な女性を描いています。彼女の衣装は柔らかいターコイズグリーンの絹のドレスで、胸元には小さなリボンが結ばれています。右腕には黄金色のショールが優雅にかけられており、その滑らかな質感が光を受けて輝いています。背景は暗く控えめで、人物に強い焦点をあて、落ち着いたが威厳のある表情を際立たせています。筆遣いは滑らかで繊細、肌の柔らかさや花冠の繊細な花びらが丁寧に表現されています。色調は冷たい青みと温かみのある金色が美しく調和し、温かみの中にも抑制された雰囲気を醸し出しています。

構図は中央に人物を配置し、静謐さとバランスが保たれています。視線は冠から楽譜へと自然に導かれ、文化と洗練された趣味を連想させます。感情は穏やかで自信に満ちており、誇示することなく鑑賞者を引き込み、優雅さと芸術性が交差する歴史の瞬間へ誘っています。ナポレオン戦後のスペインという歴史的背景の中で、貴族の優雅さを捉え、座っている人物の個性と社会的地位を繊細に表現した作品です。