ギャラリーに戻る

作品鑑賞
この作品は、ドージェ宮殿近くのヴェネツィアの水辺の穏やかでありながら活気ある雰囲気を見事に捉えています。画家は淡い青や土の色調を駆使し、霧がかった地平線に溶け込ませることで、早朝か夕方の柔らかな光を感じさせます。繊細な筆致とわずかな質感が、静かな動きと日常生活の静かな喧騒を描き出し、時の流れの中に浮かぶ景色を生み出しているのです。
構図は帆船が中心で、空に漂うクリーム色の帆が視線を導き、水面を辿ると堂々たる宮殿建築へと誘います。水の反射は優雅に揺れ、船上の人物が物語性を添えています。落ち着きの中に生気を感じさせるこの作品は、光と影、水の調和に満ちたヴェネツィアのロマンティックな過去への親密な一瞥を見せてくれます。歴史的には、1885年のフィリックス・ジームによる本作は19世紀の野外制作と東洋的影響を背景に、写実と印象派の繊細さを兼ね備えています。