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天草より雲仙岳を望む

作品鑑賞

この静謐な風景画は、緩やかに起伏する農地のパッチワークを描き、その整然とした作物の列が前景にリズミカルな視覚的調和をもたらしています。画家はグリーンと柔らかな黄緑色のグラデーションを巧みに用い、柔らかな日差しのもとで豊かな生命力を感じさせる作物の姿を表現しています。一本道を歩く人物と荷を背負った馬が一体となり、素朴で控えめな人間の存在が静かな田園の中に溶け込んでいます。遠景には鮮やかに色づいた山々と穏やかな水面が広がり、一隻の帆船が静かに水面を滑っている様子が見えます。

木版画の伝統技法である新版画の特色が感じられ、細やかな線と繊細な色彩のグラデーションが静かな叙情を誘います。構図は層状に展開し、前景の繊細なテクスチャーから中景の木々や岩を通って遠くの山々と空へと視線を導きます。冷たい青と緑を基調に暖かい土色が対比を成し、色彩のバランスと感情豊かな深みを生み出しています。この作品は、戦前の日本の田舎の自然美と人々の素朴な生活を詩的に映し出しています。

天草より雲仙岳を望む

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1937

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サイズ:

4112 × 5984 px

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