この印象派の筆致で描かれた港の風景は、1902年のグダニスク港の活気あふれる様子を捉えています。厚みのある筆使いが水面や空の動きを巧みに表現し、赤い屋根の古い建物を背景に蒸気をあげる船が並ぶ様子が目を引きます。曇り空の柔らかな光が全体に拡散し、静かでありながら忙しさを感じさせる情景を生み出しています。

色彩はグレーやくすんだ青、錆びた赤が主で、20世紀初頭の産業港のリアルな雰囲気を醸し出しています。蒸気の煙は当時の工業化の息吹を象徴し、歴史ある建築物が背景に歴史的な重みを加えています。海鳥の鳴き声や水の音、遠くの工場の音が聞こえてくるような感覚を呼び起こす、懐かしくも生き生きとした感情を抱かせる一作です。