ギャラリーに戻る
三津長浜 1937年

作品鑑賞

この静かな浮世絵作品は、穏やかな湖畔の風景を捉えており、ゆったりと浮かぶ一艘の木製の船が静かに水面に繋がれている。構図は前景の動かざる船から雪を頂いた雄大な富士山へと視線を自然に導く。左手には緑豊かな樹々が寄り添い、小さな小屋と桟橋が人の営みを感じさせつつ、全体のバランスを整えている。柔らかなグレーや青、茶色を基調とした色彩が穏やかで少し霞んだ早朝か夕暮れの雰囲気を醸し出し、淡く繊細な明暗の変化によって自然と人の調和が静謐に表現されている。

伝統的な木版画技術を活かしつつ光と影の繊細な描写が作品全体に静謐なムードを与えている。水面に映るわずかな波紋と反射が幻想的な感覚を加え、富士山という日本文化の象徴が画面の中心を力強く支える。1937年制作のこの作品は、日本の象徴的な風景への敬意を示すとともに、新版画運動における浮世絵伝統の現代的な再興を感じさせる。

三津長浜 1937年

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1937

いいね:

0

サイズ:

2115 × 3060 px

ダウンロード:

関連作品

弘前最勝院の雪景色
旅行札記Ⅱ(旅みやげ第二集) 月明の加茂湖,佐渡 1921年
日本風景選集 秋田土崎 1928
東京十二題 冬の月(戸山の原)
旅行札記Ⅱ 金沢 下本多町 1921
西伊豆三保の浜 1937年
宇治 平等院鳳凰堂 1933
別府の夕(旅行札記Ⅲ)
旅行札記Ⅲ(旅みやげ第三集)木曽川 蓬莱岩 1928
鳴沢の富士山 1936年
名古屋市瑞泉寺 1932年
春日の金刀橋 1947年