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天草より見たる温泉ヶ嶽

作品鑑賞

この鮮やかな木版画は、青々とした茶畑がゆるやかに広がり、遠くには連なる山々がそびえ立つ日本の田園風景を見事に捉えています。空は澄んだ青色に淡い雲がたなびき、作品全体に穏やかな雰囲気をもたらしています。画面の中央には丘を横切る土の道が斜めにのび、その上を小さな人物が馬を連れて歩く姿が見え、自然と共にある静謐な農村の日常の一コマを感じさせます。繊細な彫りと緻密な色使いで、茶畑の整然としたラインや樹木の細部が美しく表現され、構図は均整がとれています。

爽やかな光と影のコントラストが山の陰影と畑の起伏を際立たせ、遠くの海上には一艘の小舟が浮かび、静寂さと広がりを加えています。この作品は大正時代初期の浮世絵の流れを汲みつつ、新たな風景表現を追求したものであり、日本の自然美と農村の落ち着いた生活の情緒が息づいています。

天草より見たる温泉ヶ嶽

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1922

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サイズ:

2366 × 3200 px

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