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作品鑑賞
この威厳ある肖像画は、赤い袖口と襟が際立つ濃紺の軍服を纏った工兵准将を描いています。淡い茶色の髪に囲まれた彼の表情は、少しばかり上がった眉と知的な視線が、揺るぎない精神を感じさせます。背景がほぼ黒に近い陰影で人物を浮かび上がらせており、観る者の視線は自然とこの威厳ある軍人に集中します。制服のボタンやメダル、胸元の刺繍が彼の軍歴や階級の重要性を物語っています。
構図はシンプルながら力強く、片手は襟に差し込み、もう一方は剣の柄と思われるものをしっかりと握っており、覚悟や指揮の象徴を感じさせます。抑えた色彩は深い黒と赤、そして淡いベージュが主で、19世紀初頭の軍服の厳かな雰囲気を正確に表現しています。この作品は格式高いだけではなく、責任感や名誉、静かな自信といった感情を呼び起こし、戦乱と政治の動揺の時代における高位軍人の気品を余すところなく伝えています。