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作品鑑賞
この風景画は、19世紀末の鉄道橋修復作業を力強く捉えています。塵の舞う道が手前に広がり、木材の束や素朴な柵が並ぶ中、視線は高架の鉄道橋へと誘われます。そこでは作業員たちが広がる曇り空の下、忙しく動き回っている様子が描かれています。色彩は土色や濃い緑が主体で、空の淡い青と灰色が全体に安定感と静けさをもたらしています。筆致はテクスチャー豊かにそれでいて繊細であり、樹木や木造物に生命を吹き込みながら、その時代の一瞬を鮮やかに記録しています。
この作品は産業の進歩を讃える一方で、自然と人間の営みの調和を繊細に表現。遠くから聞こえる工具の音や労働者の声が聞こえてきそうで、小さく描かれた労働者が鉄道橋のシルエットによって際立っています。歴史の一片を切り取った本作は、郷愁と共に当時の都市開発の重要さへの敬意を呼び起こします。