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作品鑑賞
この作品は、ローマの建国神話を象徴するカピトリーノの狼像の下に立つ荘厳な人物を捉えています。流れるようなローブをまとい、牧羊の杖を手にしたその人物は、見えない聴衆に向かって手を差し伸べ、権威と古の知恵を体現しているかのようです。背景にはコリント式の柱と石造りの壁が描かれ、古典的な雰囲気を醸し出しています。淡い茶色やベージュ、青みがかった色調が作品に時代を超えた風格を与えています。
繊細なペン画とウォッシュ技法によって、衣服の質感や有名な狼像の細部が丁寧に表現されており、見る者の視線を引きつけます。感情面では、敬虔さと厳粛さが感じられ、ローマの神話的起源と文化遺産の重みを考えさせられます。台座の「SENATVS POPVLVS」という刻印は、このイメージに込められた政治的・社会的意義を強調しています。歴史的物語と芸術的技巧が見事に融合した、劇的で親密な構図の作品です。