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作品鑑賞
この印象的な海景画は、海から見たオデッサの劇的な眺めを捉えており、荒れ狂う波が力強くうねり、重く立ち込める空の下に広がっています。画家は激しい筆致で荒波を見事に描き、その泡立つ波頭は冷たい緑と白の色調で輝き、上空に迫る暗い嵐の雲と鮮やかな対比を成しています。中景には数隻の帆船が波に揺られ、傾いたマストが荒海を航行する様子が見えます。
構図は、荒々しく混沌とした海のエネルギーと、遠くの陸地に広がる穏やかな街並みの安定感のバランスを巧みに保っています。グレー、青、緑の落ち着いた色調が荘厳でやや不安を感じさせる雰囲気を醸し出し、自然の力とその予測不可能性を讃えながらも、人間のたくましさを示唆しています。オデッサが歴史的に重要な港湾都市であることも感じさせる一作です。