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作品鑑賞
朝の静かな川辺の町並みが静謐に包まれているこの浮世絵は、狭い運河に面した建物群と手前に停泊する二艘の木造船が印象的に描かれている。水面の青から朝焼けの柔らかなオレンジ色への繊細なグラデーションは、まさに日の出の穏やかな空気を感じさせる。雲は散らばり、朝の静けさをより強調し、水面の反射が一層の静寂を演出している。
光と影の巧みな使い方は、建築の輪郭を浮き上がらせつつも霧のかかった遠景の橋や建物が遠のいてゆく様子を映している。細部の丁寧な線描と伝統的な浮世絵の技法が共に美しく調和し、20世紀初頭の日本の穏やかな日常がノスタルジックに表現されている。時間がゆっくり流れるような、静かな情緒を味わえる一作。