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作品鑑賞
この木版画は、静かな海景を描いています。白い帆を張った一隻の舟が、穏やかな水面をゆったりと進んでいます。画面中央には、自然にできた岩のアーチが堂々とそびえ、赤みを帯びた岩肌の質感が繊細に表現されています。青空や柔らかな雲が背景を彩り、海面にそれらがゆらりと映り込む様子が見る者に穏やかな気持ちをもたらします。
伝統的な浮世絵の技法が際立ち、空や水面の微妙な色のグラデーションが深みを加えています。色彩は控えめながら豊かで、淡い青やクリーム色、そして優しいピンクが朝夕の柔らかな光を感じさせます。情緒的には、静謐で癒しに満ちた時間の流れを感じさせ、自然と人との調和を描き出しています。1933年の作品であり、浮世絵の新たな流れである新版画の魅力を示す一枚です。