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旅行札記Ⅰ(旅みやげ第一集)濱市堀川 1920年

作品鑑賞

この静かな木版画は、伝統的な家屋が石垣に囲まれた運河沿いに並ぶ海辺の町の美しい景色を捉えています。構図は手前の石造りの堤防から水面の反射を辿り、遠くの山々と柔らかな青空へと視線を誘います。画家の緻密な彫刻技術と微妙な色彩のグラデーション、落ち着いた青や茶色の調和が、穏やかな夕刻の雰囲気を醸し出しています。飛翔する鳥が静けさの中に生気を吹き込み、作品に動きをもたらしています。

この作品は、近代日本の新版画(shin-hanga)運動における浮世絵の復興を代表し、伝統美と写真のようなリアリズムを融合したものです。川瀬巴水の高度な技術は、色の繊細な階調と正確な遠近法に現れ、穏やかな物語性と感情の深さをもたらします。この作品を見ると、広大な自然と人々の暮らしが織りなす調和のとれた静寂な瞬間に心が運ばれるようです。海風のそよぎや波の音さえも聞こえてくる気がします。

旅行札記Ⅰ(旅みやげ第一集)濱市堀川 1920年

川瀬 巴水

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制作年:

1920

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サイズ:

5680 × 3810 px

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