ギャラリーに戻る
相州七里ヶ浜 1930

作品鑑賞

深く広がる藍色の空の下、静かな月夜の海岸風景が繊細に描かれている。満月が穏やかな海面に柔らかな光の道を作り出し、砂浜に佇む男女二人と小犬が静かなひとときを共にしている。遠くには島影や小さな丘が暗い輪郭として浮かび上がり、岸辺のちらりとした明かりが夜の静寂に温かみを添えている。木版画ならではの丁寧な色のぼかしと緻密な質感表現が光っており、波の動きや砂の様子、草の葉先に至るまで繊細なタッチが感じられる。

構図は広がる水平線を強調し、静寂と広がりの感覚を深める一方で、人物たちが物語性を与え、静かに寄り添う人間味を添えている。1930年、日本の新版画運動の時期に制作され、伝統の浮世絵技術に現代的感性を融合させるこの作品は、自然美への新たな賛歌であり、観る者に郷愁と心の安らぎをもたらす。

相州七里ヶ浜 1930

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1930

いいね:

0

サイズ:

6374 × 4234 px

ダウンロード:

関連作品

東京二十景 桔梗門 1929年
雪後の夕暮れの森崎
東京二十景 大森海岸 1930年
日本風景集 天草御領 1922
旅行札記Ⅱ(旅みやげ第二集) 雪の宮島 1928年
日本風景選集 肥前加津佐 1937年