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作品鑑賞
この美しい木版画は、黄昏時の静かな港の景色を捉えています。画面前景には堂々とそびえる大きな鳥居が配置され、濃い青と灰色で描かれています。空は地平線付近の温かみのある桃色から上部の涼しげな青緑色へと柔らかく変化し、淡い色調で黄昏の静けさを伝えています。
構図は慎重にバランスがとられており、鳥居や周囲の柱が垂直線を強調して視線を導き、水面上には多くの細長い船の帆柱が点在し、地域の海洋文化を感じさせます。繊細で精密な線描がリズム感を生み出し、落ち着いた色調が自然の光の移ろいを際立たせています。この作品は新版画運動の特性を持ち、伝統的な浮世絵を新鮮な視点と現代技術で蘇らせています。日と夜の狭間の静謐な瞬間に心を誘う一作です。