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東京十二題 大根河岸

作品鑑賞

この作品は、石積みの護岸に沿って伝統的な木造建築が並ぶ静かな川辺の風景を描いています。構図は運河と家並みの斜めの流れによって視線を巧みに導き、左下の活気ある庭から川岸沿いのささやかな日常の営みへと自然に連なります。小舟に乗る二人の人物や、玄関前にしゃがむもう一人の姿が、穏やかな暮らしの息吹を感じさせます。建物の屋根や石壁の細やかな模様と質感は、まるで触れられるかのようなリアリティを生み出しています。

落ち着いたアースカラーと淡い青や緑を基調とした色調で、自然と人の調和が静かに表現されています。水面の柔らかな筆致が流動的な静けさを醸し出し、建築や樹木の鮮明な線描とは対照的です。鑑賞者には平穏で懐かしい感情が湧き起こり、20世紀初頭の新版画運動の特色である深みのある空間表現と繰り返されるリズム感が感じられます。

東京十二題 大根河岸

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1920

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サイズ:

2175 × 3200 px

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