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作品鑑賞
この作品は、静かで穏やかな庭園の景色を描いています。中央の小さな緑の島に二羽の優雅な鶴が佇み、その周囲には水面が静かに広がっています。背景には密集した樹木が茂り、伝統的な日本家屋が静かに存在感を示しています。青空には柔らかな雲が浮かび、全体に安らぎの空気が漂っています。川瀬巴水の繊細な木版画技法が活かされ、葉や水面、建物の細部まで丁寧に描写されているのがわかります。色のグラデーションは柔らかな緑や淡い青でまとめられ、人と自然との調和を感じさせます。見ていると、葉擦れの音や鶴の鳴き声が聞こえてきそうな、静謐な情景が広がります。1934年の制作で、日本の伝統的な風景版画の美しさと季節の静けさを深く表現した一作です。