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作品鑑賞
夕暮れの穏やかな光が古木の樹冠を薄明かりに包み、静寂な街並みが広がります。幅の狭い路地は伝統的な日本建築に挟まれ、石垣は陰影に覆われながらも年月の風合いを感じさせます。屋根の曲線は優雅に空の漸変を際立たせ、遠くには独り歩く人影が見え、静けさと時の流れを映し出します。
この木版画は多層の色彩技法で深みと微妙な色の変化を巧みに表現。構図は曲がりくねった路を視線が自然に辿り、建築と自然が調和した端正な美を示します。限られた青や灰色、土色を基調とした色調は穏やかで瞑想的な雰囲気を作り、鑑賞者を時間を越えた静謐な瞬間へと誘います。日本の生活と精神文化を映した、時代の背景を感じさせる名作です。