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旅行札记Ⅱ おぼろ夜(宮島) 1921

作品鑑賞

この静けさに包まれた夜景は、繊細な藍色と深い群青色が水辺の宵を描き出し、遠くに伝統的な鳥居が厳かに立つ。構図は自然と人工物の調和を絶妙に保ち、画面上部には松の大木が枝を広げ、その柔らかな葉影が広がる。二つの石灯籠は静かな灯火を放ち、夜の冷たいトーンと対比をなす。ひと頭の鹿が穏やかに佇み、輪郭が優しく、俗世と神聖を繋ぐ繊細な焦点となっている。

新版画の特徴である繊細な色のぼかしを用いて夢のような雰囲気を漂わせ、テクスチャーと色調が静寂と神秘を呼び起こす。丁寧に彫られた線が松の枝や水面の波紋の細部を浮かび上がらせ、全体の構成は見る者の視線を前景から静かな遠景へと誘う。この作品は鳥居に象徴される日本の精神性を映すだけでなく、黄昏の自然美を繊細に感じさせ、瞑想的且つ畏敬を抱かせる体験をもたらす。

旅行札记Ⅱ おぼろ夜(宮島) 1921

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1921

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サイズ:

2172 × 3088 px

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