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作品鑑賞
この浮世絵版画は、上野の東照宮での静かな冬景色を見事に捉えています。三層の赤い五重塔が中心に据えられ、雪が厚く積もった屋根が印象的です。背景の木々のシルエットを背景に、夜空には無数の雪が降り注ぎ、しんと静まり返った冬の夜を感じさせます。深い藍色の着物を着た人物が和傘をさして歩く姿が、静けさと内省的な雰囲気を添えています。雪をかぶった狛犬の像が神聖な境内の雰囲気を醸し出し、細かい線描や色彩の濃淡がこの作品の技術の高さを示しています。自然と建築の調和を美しく捉えた一瞬の静寂が心に響く作品です。