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上野東照宮の春の夜

作品鑑賞

新月の穏やかな光に包まれたこの作品は、春満開の淡いピンクの桜に囲まれた日本の歴史的な五重塔を捉えています。深く澄んだ青空は静けさを奏で、階層ごとの瓦屋根の温かみのある赤茶色と鮮やかな対比を見せています。細部にまでこだわった木造の造りや屋根の流線は、版画のしんが風の繊細なグラデーションと相まって、見る者を静謐な世界へと誘います。桜の花びらが織りなす柔らかなピンクと白の繊細な陰影が、堅牢ながらも優美な塔のシルエットを包み込み、自然と人の技術が調和する様子が印象的です。

垂直に強調された構図は、塔の頂上へと視線を導き、月の光の下に荘厳で静かな空気を漂わせています。芸術家は冷たく透き通る夕暮れの空と、建築の温もりを見事に調和させ、郷愁と平穏が満ちた夜の情景を描写しました。この作品は、春の儚い美しさと聖地の永遠の静けさを讃え、日本美学に根付く無常観や再生のテーマを深く反映しています。戦後の文化的な平穏への渇望と伝統工芸への敬意も感じられる一作です。

上野東照宮の春の夜

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1948

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サイズ:

2081 × 3080 px

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