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作品鑑賞
この作品は、緑豊かな木々と岩が点在する静かな川辺の風景を見事に捉えています。中央には淡いピンク色の花が鮮やかに咲き誇り、濃淡様々な緑の葉と調和して視覚的な安らぎと生気を醸し出しています。水面は流れるような線で繊細に表現され、深みのある青から薄い青へと色が移り変わることで、静かで涼やかな空気感を感じさせます。構図は左側の力強い葉の塊と背景の柔らかな山並みが絶妙にバランスをとり、視線が自然に画面を巡ります。
伝統的な木版画技法が巧みに使われており、色の重ね方や細部の繊細さに技術の高さがうかがえます。岩の輪郭から木陰の細やかな陰影に至るまで丹念に仕上げられ、この作品は視覚的な美しさだけでなく、静かな感動をも呼び起こします。1936年制作のこの風景画は、日本の風景版画の伝統を反映しつつ、写実と詩的表現が見事に調和しています。