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作品鑑賞
この木版画は、大阪宗右衛門町の夕暮れの街並みを生き生きと切り取り、光と影の繊細な響き合いが静かでありながら活気ある都市の雰囲気を醸し出している。伝統的な木造建築が闇に沈みつつも、窓の明かりや欄干や店先に並ぶ赤い提灯の柔らかい灯りが印象的に浮かび上がる。数名の着物姿の女性たちが歩く姿が、静寂の中に人間の温もりを添えている。
構成は斜めに視線を導き、影に包まれた前景から灯籠の明かりが灯る建築群へと続く。色彩は抑えめの深い青緑、落ち着いた黒、柔らかな赤でまとめられ、情緒豊かなムードを生み出す。この作品は新版画運動の伝統的な浮世絵技法とモダンな感覚の融合を体現し、色の階調や遠近法の革新が日本の古典美学と見事に調和している。感情面では、20世紀初頭の京都の夜の優雅さと文化的な活気を詩的で郷愁を誘う形で伝え、観る者に瞑想的な気分を抱かせる。