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作品鑑賞
この魅力的な版画は、生き生きとした赤、白、深い藍色の花弁が鮮やかに映える、豊かな緑の葉に囲まれたアヤメの群れに私たちをいざないます。浮世絵の技法が見事に表現されており、鮮明な線と色彩の層がリズミカルな動きをもたらし、葉が調和した舞を奏でているかのようです。画面上部にわずかに覗く青空と、飽和した緑、宝石色の花々との対比が静けさと生命力の交錯を醸し出しています。
花々はまるで息づいているかのような繊細さで、写実的かつ様式化された美しさのバランスが絶妙です。1929年制作のこの作品は、伝統的な木版画と近代主義の影響が交錯し、植物を愛した芸術家の情熱と革新性を示しています。密集する植物群が画面を満たし、鑑賞者を静けさと内なる活力が入り混じる花の世界へと誘います。