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京都上賀茂の冬

作品鑑賞

この静かな木版画は、京都の上賀茂の冬景色を繊細に描いています。画面は、まず色鮮やかな鴨川の流れから始まり、凍てついた草原が広がり、その奥には藍色の屋根が並ぶ日本家屋の集落が見えます。背景には朝日か夕日を浴びて柔らかく橙色に染まった山肌がそびえ、枯れ木の葉や空の雲が冬の冷たさを感じさせます。茅葺屋根の独特な形と、整然と並ぶ家々が調和し、穏やかな村の暮らしの息遣いが伝わってきます。

技術的には新版画の特徴である細やかな線描と繊細な色彩が駆使され、伝統的な浮世絵の構図に西洋的な遠近法や光の扱いが融合されています。寒色と暖色のバランスが絶妙で、静寂で澄んだ冬の空気がリアルに感じられます。制作当時の1930年代の日本の田舎の風景を捉えたこの作品は、自然の美しさと人々の暮らしが調和する瞬間を情感豊かに表現し、鑑賞者を懐かしさと敬意の世界へ誘います。

京都上賀茂の冬

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1935

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サイズ:

4408 × 6352 px

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