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作品鑑賞
この美しい木版画は、建築の威厳と自然の調和に満ちた穏やかな世界へと観る者を誘います。精巧な構図はバランスと遠近法の妙で、伝統的な日本建築の石垣と屋根の線が画面右側を占め、ゆるやかに奥へと伸びていきます。澄んだ水面は建物の下部の石垣を映し出し、静謐な安らぎを感じさせます。遠景には緑豊かな木々と柔らかな山並みの間に櫓が見え、淡く広がる空には淡色の雲が優しく浮かんでいます。
配色は落ち着いたアーストーンと豊かな緑、そして透明感のある水の青が調和し、空のグラデーションと穏やかな対比をなし、しんが絵の柔らかな表現と細部の精緻さが特徴です。見ていると静かな反省と郷愁が胸に響き、20世紀初頭の東京の伝統と現代が交錯する美しい瞬間が切り取られています。