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作品鑑賞
この作品は穏やかな日本の村の夕暮れの情景を捉えています。石垣沿いの細い水路に枝を伸ばす大きな木が印象的で、静かな夜の空気を感じさせます。深い青と沈んだ緑の重なりが、暮れなずむ空と流れる雲を繊細に表現し、視覚に柔らかな動きを与えています。家の窓から漏れる小さな黄色い灯りは、内なる温もりをほのめかし、外の静けさと絶妙な対比を成しています。
伝統的な木版技術の巧みな使い方が光り、細部まで繊細に作り込まれています。電柱のシルエットと建物の姿は影の中で際立ち、人の営みと自然が交わる瞬間を描写。色のグラデーションと縦の線が視線を導き、葉のざわめきや村の夜の息づかいが聞こえてくるようです。1928年という歴史的背景を持ちつつも、時を超えた静謐な美しさを湛えています。