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作品鑑賞
この木版画は、雄大な雪をまとった山(おそらく富士山)を中心に据えた静かな冬の風景を描いています。前景には霜に覆われた田んぼが広がり、その中に藁がきれいに束ねられて置かれています。澄んだ空は柔らかな青から淡い白へとグラデーションし、冬の冷たさを感じさせながらも清々しい朝の雰囲気を醸し出しています。作品に見られる繊細な線描と陰影の使い方は、藁の粗い質感や雪に覆われた山肌の滑らかさを巧みに表現していて、控えめながらも豊かなディテールを持っています。
構図は自然と人の営みが調和し、険しい丘陵と冬枯れの木々が霜で覆われた大地とバランスを保っています。暖かみのある土色と藁の色が、淡い青や白と対照的に配置され、穏やかな色彩が静寂な感覚を強めます。1939年に制作されたこの作品は、浮世絵の伝統を受け継ぎつつも、現代的な精緻さと透明感を合わせ持ち、冬の朝の静けさと力強い生命力を表現しています。