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作品鑑賞
この作品は広がる穏やかな海に伸びる木製の桟橋と、静かな海辺の景色を見事に捉えています。雲がたなびく空の下、深い青と緑の水面が繊細に表現され、白い帆を揺らしながらゆったりと進む船が穏やかな時間の流れを感じさせます。遠くに見える島々が画面に奥行きを与え、伝統的な木版画技法の精緻な線と質感は水面や木の質感を生き生きと伝えます。
落ち着いた青緑を基調にした色調は静謐な雰囲気を醸し出し、波の静かな音や海風の爽やかさまで感じられそうです。人の生活の存在を示す桟橋と船が自然と調和し、20世紀初頭の日本の海沿いの暮らしを映し出すこの作品は、伝統的な浮世絵の技術と現代的な感性が融合した傑作と言えるでしょう。